
TSとスマホ測量のどちらが優れているかではなく、何を納めたいかで方式は決まります。
- 少数の点の座標が欲しい:TSかRTK-GNSS
- 設計位置へ杭や墨を出したい:TSか、位置出しに対応するRTK-GNSS
- 地面や構造物を面で残し、後から断面や距離を見たい:レーザースキャナー
「スマホ測量」と呼ばれる方法は、測っているものによって3つに分かれます。
- 外付けのRTK-GNSS受信機をスマホにつなぎ、点の座標を取る方法。TSやRTK-GNSSと同じ「点」の仕事です。
- スマホ内蔵のLiDARで周りの面を取る方法。小範囲の記録や概略寸法に向きます。精度の考え方はスマホ内蔵LiDARの精度で説明しています。
- 専用のレーザースキャナーをスマホで操作する方法。スマホは操作画面で、面を測っているのはスキャナーです。
最初に、納めるものを「座標一覧」「位置出しした点」「現況点群と断面」から選びます。次に、許容差・座標系・高さの基準を図面や発注条件で確かめます。最後に現場の視通と上空視界を見れば、方式は絞れます。
仕事別の方式の選び方
| 終わらせたい仕事 | 第一候補 | 選ぶ条件 |
|---|---|---|
| 基準点や構造物の角など、少数の重要点を測る | TS | 器械点から対象まで視通を取れ、既知点と後視点を使って観測できる |
| 設計座標へ杭・墨・構造物の位置を出す | TS、または位置出しに対応するRTK-GNSS | TSは視通を確保できること。RTK-GNSSは上空視界と補正情報を確保し、必要精度を既知点で確かめられること |
| 開けた場所を移動しながら、多数の点の座標を取る | RTK-GNSS | 建物や樹木による遮蔽・反射が少なく、測位の確定状態を保てる |
| 法面・床・壁・配管などを面で残し、後から断面・距離・高低差・面積を見る | レーザースキャナー | 対象面へ安全に近づけ、必要な面を複数方向から取れる |
TSは角度と距離から対象点を求めます。どの点を測ったかを管理しやすい方法です。自動追尾型なら、一人でプリズムを持って観測できる機種もあります。たとえばトプコンのGT-1500/700シリーズは、ワンマンの自動追尾モデルとツーマンの自動視準モデルを分けて案内しています。TSを常に二人作業と決めず、使う機種と安全上必要な人数で判断します。
RTK-GNSSは、器械点から測点までの視通がなくても座標を取得できます。その代わり、上空を遮る建物や樹木、反射した信号の影響を受けます。国土地理院も、上空障害物によるマルチパスで高精度測位が劣化する場合があると説明しています。画面に座標が出ただけでは採用しません。補正情報と測位状態を確かめ、現場の既知点を作業の前後に測ってずれを見ます。高さが判断を左右する場合は、高さの種類と既知点の高さもそろえます。
レーザースキャナーは、一本の杭の位置を決める機器ではありません。周りの形を多数の点で残す機器です。断面位置が後で変わる場合や、現地へ戻らずに既設物との離隔を確かめたい場合に向きます。点群の形が見えていても、現場座標に正しく置かれているとは限りません。設計図と重ねるなら座標と高さを合わせ、位置合わせに使っていない点でも確かめます。
一つの現場での点と面の分担
点と面の両方が必要なら、一つの方式に寄せずに分担します。
- TSまたはRTK-GNSSで、基準に使う点と施工判断に直結する重要点を測ります。
- レーザースキャナーで、断面を切りたい範囲や既設構造物を面で取得します。
- 点群を現場座標へ合わせる場合は、位置合わせに使う点と、結果を確かめる点を分けます。
- 必要な断面や距離を切り出し、重要点の座標と食い違わないかを確かめます。
手持ち型のLidarSLAMを公共測量に使う場合は、製品仕様だけで適否を決められません。国土地理院の「LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル」は、精度・性能試験で要求仕様を確かめる手順を定めています。標定点と検証点を分けることも求めています。公共測量でなくても、合わせた点とは別の点で確かめる考え方は同じです。
Rentで試す範囲:面の取得から断面の取り出しまで
ラクソクRentは、スキャナー・スマホ・解析ソフト・PCをまとめて借りる構成です。スキャナーはラクソクScan Handy1、スマホのアプリはラクソクGo、解析ソフトはラクソクStudioです。先の3分類では「専用スキャナーをスマホで操作する方法」に当たります。
試すときは、現場を歩けたかではなく、必要な断面や距離をStudioで取り出せたかまで見ます。断面位置が少数で事前に決まっているなら、TSで必要な点だけを測るほうが早く終わります。現場で取った後に断面を選び直したいなら、面を残すRentを試す理由があります。
点群をTSやRTK-GNSSの座標へ合わせる作業は、レンタル一式とは別の工程です。CAD作図と成果の検査も、別に決めておきます。
うまくいかないときの戻り方
- TSから対象への視通がない:ノンプリズム測距でも解決しません。器械点を移すか、上空が開ける範囲だけRTK-GNSSに分けます。
- RTK-GNSSが確定しない、既知点と合わない:その点は採用しません。上空障害物から離れて観測し直し、それでも合わなければTSへ戻します。ばらつく値を平均しても、反射による偏りは直りません。
- 点群の一部が欠けた、同じ壁が二重に見える:欠けた面は別方向から追加計測します。二重になった区間は、短く区切って取り直します。
- 点群全体が一定量だけずれる:座標系・高さ・既知点との対応を確かめ、位置合わせをやり直します。区間ごとに形が曲がっている場合は、取り直します。
まとめ:決め手の点はTSかRTK、周りの面はスキャナー
点の座標と位置出しはTSかRTK-GNSSで行います。面の記録と後からの断面はレーザースキャナーで行います。「スマホ測量」の多くは、RTK受信機かスキャナーをスマホで操作する方法です。内蔵LiDARは、小範囲の記録に使います。両方が要る現場では、基準と重要点をTSかRTK-GNSSで押さえ、その周りをスキャナーで面として取ります。
次の現場では、まず納めるものを「座標一覧」「位置出し」「点群と断面」から選んでください。上の表で第一候補を決めてから、機材を手配します。