
校正証明書があっても、輸送後の機器をそのまま使うのは適切ではありません。証明書で確かめられるのは、記載された機器・項目・条件での校正結果です。その後の輸送や衝撃、当日の据付け、入力した設定、取得から出力までの状態は別に確かめる必要があります。
使うかどうかは、「証明書の対象と今の機器が一致するか」「当日の点検に異常がないか」「既知の対象を測った結果がこの仕事の基準に入るか」の順で決めます。
最初に証明書と現物を合わせます
機器の型式・製造番号と、証明書の対象が合っているかを見ます。次に、校正した項目、結果、測定不確かさ、日付を読みます。JCSSの校正証明書は、記載された校正結果が国家計量標準へトレースできることを示すものです。当日の据付けや仕事全体の合否を示すものではありません。
公共測量など機器検定が指定される仕事では、校正証明書を検定済証の代わりにしません。使う方式に必要な検定と有効期間は、発注条件と作業規程の準則で別に確認します。
輸送後は、メーカー手順と仕事の出力を両方見ます
まず、ケース、本体、レンズや窓、コネクタ、三脚や固定部に破損・汚れ・緩みがないかを見ます。電源を入れた後は警告表示、気泡管や補償器、通信を含む機器固有の点検を、その型式の取扱説明書どおりに行います。
例えばTrimbleは、TSの計測前チェックと校正・調整機能の手順を分けて示しています。そのメニュー名や順序は対応機種の例であり、他の機種に読み替えて操作してはいけません。
その次に、仕事で使う出力に合わせて既知の対象を測ります。
- TSで座標や角度を使うなら、据付けと機器高を含め、座標が分かっている点や対象を測ります。
- GNSSで座標を取るなら、アンテナ高、補正情報、測地基準・座標系・高さの設定を揃え、既知点で確かめます。
- 点群の寸法や断面を使うなら、処理に使わない既知寸法や確認点を含めて取得し、合成・座標付与・出力後の成果で読みます。
機器の自己診断が通っても、案件で使う座標や断面まで正しいとは限りません。判定値は任意に作らず、メーカーの要件と、その仕事の成果基準を使います。
合わないときは、設定を直して同じ基準で再確認します
既知値と合わなければ、まず据付け、機器高・アンテナ高、単位、座標と高さの設定、補正情報、対象点の選び方を戻します。データを数値だけ平行移動し、合ったように見せるのは再確認ではありません。
設定を直したら、機器を据え直すか測定を最初から行い、同じ基準で判定します。同じ向きと大きさの差が再び出る、メーカーの校正操作を繰り返しても値が安定しない、原因を説明できない場合は、その仕事への使用を止めます。その後はメーカー・検定機関の手順に沿って、調整、校正、検定、修理のどれが必要かを分けます。
異常が出たら、その日の計測だけでなく影響範囲を決めます
作業中や後日の点検で異常が出た場合は、最後に正常を確認した時点まで戻ります。国土地理院の測量機器の現場試験基準も、機器が要件に適合しないと判明した場合に、以前の測定値の有効性への影響を調べ、必要な処置を行うよう定めています。
問題が出た機器のデータは、別の機器や独立した基準で再確認できるまで成果に混ぜません。影響開始時点を絞れなければ、最後の合格確認後のデータ全体を対象にします。
残す記録は、機器・製造番号、使ったソフトと設定、据付けと既知対象、調整前後の結果、合格・中止の判断です。証明書の日付だけでなく、どのデータまで戻るかを説明できる状態にします。